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機関紙「住団連」
  • 『住宅供給システムの改革』
  • 京都大学名誉教授  巽 和夫(住団連「住宅は社会性をもった財」研究会座長)
  • 住宅宅地審議会の報告「21世紀に向けた住宅政策の基本的体系について」(平成7年)に示された新しい住宅政策の方向は、ごく簡単にいえば、これまでの公的住宅供給中心の政策から市場依存型の政策への大きな転換である。公的住宅供給といっても公庫融資を別にすれば、公営・公団住宅供給の比重はこれまでも数%程度でしかなく、圧倒的に民間住宅供給が占めていたわけだから、新政策においても公・民の住宅供給比率にさほど変化が生じるわけではない。新政策の実質的な意義は、これまで主に民間住宅事業を対象とする行政でありながら狭義の住宅政策には含まれていなかった「建築指導」や「住宅生産」をも仲間に入れて、総合的な住宅行政の体制と政策を確立しようとするところにある。
  • 今日、わが国の住宅産業は巨大な規模に成長し相当な実力を備えてきているが、十分に信頼しうる住宅市場機能を形成しているかどうか、問題も少なくない。阪神・淡路大震災においては20万戸に及ぶ住宅が倒壊した。住宅産業界はこの貴重な経験を生かして、住宅の設計・材料・工法・生産・施工の改善に取組んでいかなければならないが、残念ながら、現地からの情報は、「建築基準法違反率が震災前の数倍に上っている」とか「手抜き工事が後を絶たない」とか「街なみがまるで住宅の展示場のようだ」とかいった芳しくない話が多いのである。
  • このような実態は被災地に見られる特殊な現象ではない。建築が竣工すると監督官庁に検査を受けて「検査済証」を交付してもらうことになっている。ところが、検査済証の交付率は住宅について、大都市では軒並み10数%といった驚くべき数字なのである。検査済証が交付されていないのは、竣工した建築に何らかの法律違反があるからであるが、いっそう寒心に堪えないのは、こうした違反建築が何らの支障もなく売買され使用されていることである。「これが法治国家の姿なのか」、とまことに暗然たる思いがする。
  • 住宅の建築基準法違反には、建ぺい率違反や容積率違反が大部分を占めているが、現場検査が行われていないから、不良工事も多数含まれているに違いない。阪神・淡路大震災では、現場検査を義務づけられている公庫融資住宅については有意に被害が少なかったことが報告されている。工事の進行に伴って前の工程部分が覆われてしまうという建築工事の性格からして、現場検査は良質性を確認するためには必須の条件である。確保申請の内容とは全く異なった工事が行われて近隣から告発されたとしても、行政による違反の是正は容易ではなく、やがて電気・水道・ガスが組込まれ住居が始まると、結局事実上建てられてしまう。
  • 21世紀に向かう住宅政策が市場依存型で行くからには、民間の住宅産業や住宅市場が行政の力に期待するだけではなく、事業活動を自ら厳しくコントロールするべきである。住宅産業の中核的な団体である住団連の活躍に期待するところは大きく、またその責任も重いといえよう。

 

 

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