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機関紙「住団連」
  • 『リサイクル事始め』
  • 明治大学助教授  菊池 雅史
    住団連「環境管理分科会」座長
  • 約20年前から、建設副産物や工業副産物のリサイクルとそれに付随して環境保全に関する研究を続けている。このような経緯もあって、リサイクルについては研究者として少なからぬ気負いをもっていたが、あることからこれが単なる過信であったことを思い知らされた。それは、「漢字の知恵」(遠藤哲夫著、講談社現代新書)で【棄灰の刑】を巡る孔子とその弟子の子貢との会話のなかにでてくる「その昔、殷の法律では灰を街路に棄てたものの刑は、死刑であった。」という一文であった。不法投棄に対する厳罰がすでに殷の時代にあったということ、【棄】という文字は、生まれ落ちる子供をちりとりと左右の手で受け止めるという4つの文字で構成されており、子供の元気な成長を願って一度棄ててから拾いなおすという意味とのことであった。驚くと同時に【棄てる】というのは決して棄てっぱなしではなく、また手元に引き寄せて大事に育てあげるということに、まさに目から鱗の思いであった。これを契機に、リサイクルと環境破壊に関する歴史を調べることとなった。
  • これまでで最も古いリサイクルの記述としては、古代ローマにおけるアッピア街道の路盤材として、建物の残屑や煉瓦くずを使用していること、環境破壊ではBC5000年頃、ギルガメッシュ人が神殿建設のためにレバノン杉を大量に伐採したためレバノン杉が絶滅したことなどがある。わが国の例では藤原宮の造営とそれに引き続く石山寺の建立のため現在の滋賀県の田上山が荒廃した記録がある。
  • わが国では、江戸時代のリサイクルに目を見張るものがある。リサイクルの範疇に属するといえる商売として、紙屑買い、古傘買い、堤灯買い、屑鉄買い、蝋燭の流れ(しずく)買い、古着商、羅宇屋、雪駄直し等がある。さらに、木灰については、灰の市が開かれるまで発展し、肥料、酒造、種麹、和紙、染料、焼物等の工業用原料として流通している。
  • また、環境保全の面についても、江戸初期には川筋へごみを棄てることを禁じ、これを舟で永代浦に捨てにいくようにとのお触れも出され、これに合わせて収集、運搬、処分(埋立)のごみ処理のシステムを確立されている。同時に川ざらいを定期的に行い水質の保全も義務づけている。し尿についても肥料という有価物で流通している。
  • 江戸時代の経済は鎖国という特殊な状況下で成立しており、いわば閉鎖的な環境でリサイクルと環境保全が成立したといえる。ひるがえって現在を考えたとき、経済原則や市場原理に当時と大きな差はあるものの、地球という規模での閉鎖的環境にあることには相違なく、学ぶべきところは多いにあろう。
  • 持続可能な生産活動を可能にするために、住宅生産者は来るべき21世紀を環境元年と位置付け、まずその一翼を担うリサイクルを推進すべきであろう。

 

 

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