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機関紙「住団連」
  • 『障害者と建築的障害』
  • 日本大学教授  佐藤 平
  • 今から40年ほど前のことである。アメリカで身体障害者が教育を受けられなかったり、職業につけなかったりしている最大の原因は建築的障壁であり、その事がアメリカの社会的・経済的利益を減退させているという事が指摘された。そしてこれを解決するためケネディ大統領は直ちに諮問委員会を設け、約2年間の検討の結果1961年に出来上がったのが、「建築物及び設備を身体障害者にも近づきやすく使用できるものにするためのアメリカ基準仕様書」である。しかしこの基準が実際に公式に採択されたのはそれからしばらく経ってからのことであった。
  • イギリスで同様の基準が作られるようになったきっかけは、1962年アメリカの基準作成者の一人T.J.Nugent教授が英国王立建築家協会で講演をした事がきっかけである。そしてこの講演を聞いた建築家と身体障害者団体が一緒になり検討した結果1963年に「障害者にとって近づきやすい建築物の基準」を作成した。その後この基準は急速に世界に広まり1970年にはカナダ、オ−ストラリア等も基準を制定した。
  • わが国でも1963年日本大学の木下茂徳氏(現名誉教授)の発案により英国王立建築家協会のメンバ−で基準作成委員の一人でもあったウイックル氏を招聘、日本建築学会、建設省などを訪問し早期の検討を促した。しかし当時の日本では全く関心を持って貰うことが出来ず、結局ウイックル氏は日本大学でたった1回の講演を行なっただけで帰国した。
  • 日本でこの事に関心が持たれるようになったのは、昭和40年代の後半仙台市を始め福島県郡山市等で障害者の住める街づくり市民運動が起こってからである。この運動が功を奏したかどうか明らかではないが、その後昭和50年には建設省大臣官房官庁営繕部で「身体障害者の利用を考慮した設計資料」を作成するなどして国の公共建築物には身障者への配慮の必要なことが示された。
  • そしてようやく平成6年になって「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(通称ハートビル法)」制定された。日本もこの法律が出来、ようやく世界の先進国の仲間入りをしたことになるが、アメリカの基準制定に遅れること30数年である。しかしもうすでにアメリカでは1990年にA・D・A法(障害をもつアメリカ人に関する法律)が出されている。このA・D・A法とは、アメリカ人個々の人に与えられている市民権と同様な市民権を障害を持つ人々に対しても与えようとしたもので、具体的な内容の一部を示すと、(1)新築の公共建築はすべての障害者にとって利用可能であること。(2)レストラン、ホテル、小売店等も障害者にとって利用可能であること。(3)既存建物も同じであるが、それが難しい場合は別のサ−ビスを提供すること等を義務づけている法律である。そして更にこのA・D・A法には罰則規定が設けられている。出来れば日本も早く罰則規定を設けるようにしてほしいものである。

 

 

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