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機関紙「住団連」
  • 『すだれ』
  • 東京大学教授  坂本 功
  • この夏の課題は、「すだれ」である。頭が薄くなった状態のことをそのように表現することがあり、それも気にならないではないが、ますます父に似てきただけのことで、無駄な抵抗はしないことにしている。
  • ここでの話は、すだれ(漢字では簾と書く)そのものである。私の家は、公称では南側に道路があるが、実は相当東に振っている。冬の朝は陽当たりがよくて快適だが、夏はたまらない。これまで、シャッターを半分降ろしたままにしておくなど、姑息な手段で抵抗してきたが、効果は芳しくない。
  • そこで、窓の外にすだれをつけることにした。まず、ベランダの下面に物干し竿を吊る金具を付けようとしたが、家内が雨漏りしたら困るという。建築的にはその心配はないが、理屈で説得することがいい結果につながらないことは経験上わかっているし、また構造屋としては仕上げ材の保持力も怪しいので、さらになによりも木造屋とはいえ実技はさっぱりなので、この方法はあきらめた。
  • いろいろ考えた挙げ句、やっぱり突っ張り棒(これは商品名かもしれない)でやることにした。これは実に便利なものである。ひところ、家中のあちこちにこの突っ張り棒をつけたら、娘が、「こんなにたくさんつけたら、おうちが破裂するんじゃない」と、まあ冗談ながら心配したことがある。
  • 今回は、ホームセンターに休日毎にいって下調べして、十分な長さのものを買ってきて、縦にして3本並べ、これに上下2本物干し竿を渡して骨組みを作った。ちゃんとそれ用の部品があるのが気がきいている。天津すだれを2つ並べて垂らして完成した。家内が納得したのはもちろんであるが、それよりも家の中からすだれ越しに見る緑はなかなかいいものである。
  • ところで、こんな私事を書き連ねたのは、このところ近所で新築されたいくつかの戸建て住宅を見ていて、何かおかしいと思うからである。
  • 我が家と同様後付けですだれを垂らした家がある。直射日光を遮る特殊なガラスの広告は新聞雑誌にあふれていても、すだれに代わる気のきいたものはない。立派な玄関ドアにくさびをかませて、半開きにしたままの家もそこここにある。断熱ドアはあっても、通風窓付きのドアは、カタログをひっくり返さないと見つからない。
  • 木造をやっていると、現代風の −つまり住団連傘下の各会社が作っているような− 住宅に批判的な記事や発言によく出会う。それらが日本の伝統的な木造住宅の良さをすてて、自然な環境よりも人工的な環境の住宅を指向しているようにみえるからであろう。
  • 構造屋としては、概して現代風のものが強いと思っているが、もっと住宅全体のことを考えると、かならずしも望ましい方向には行っていないような気がする。もっとも、こんな時代遅れみたいなことを言っていては、商売にならないのかもしれないですね。

 

 

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