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機関紙「住団連」
  • 『高齢化社会にふさわしい住宅政策を』
  • 埼玉大学助教授  大田 弘子
  • 遠からず、65歳以上の人口比率は20%を超す。本格的な高齢社会の到来である。超高齢社会を支える制度として、年金・医療・介護のありかたに焦点があてられているが、それと並んで高齢者の住宅問題がきわめて重要なテ−マである。住宅がどのような状況にあるかによって、高齢者の生活環境は大きく異なり、したがって公的な生活保障の必要性も大きな影響を受けるからだ。
  • 実際、住む家をもっていれば老後は安心、というわけにはなかなかいかない。一戸建てを売却してマンションに移る、子どもとの同居にふみきる、有料老人ホ−ムに入居する・・・・老後にはいってからの転居や持家売却の選択肢はさまざまである。しかし、現状では住み替えは必ずしもスム−ズではない。たとえば、持家を残したまま試験的に子どもとの同居を始めるケ−ス。人生最後の一大選択だから、慎重に事を運んで当然である。しかし、その間誰かに家を貸せば、借地借家法がネックになって簡単に売却できなくなる可能性がある。譲渡益課税も重くなる。
    あるいは、持家に住み続けたまま、家を担保にして老後の生活費を借り入れる方策も、現在は十分に整っていない。
  • 持家でない高齢者にとっては、賃貸住宅が借りにくいという問題が深刻である。とくに単身の高齢者は住宅を見つけにくい。 借家の人は老後の住まいが不安なく確保され、持家の人はその持家が老後のニ−ズに対応して生かされるように、総合的な政策を検討する必要がある。少なくとも次のような対策が必要であろう。
  • 第一に、高齢者については、居住用不動産の譲渡益課税の特例を設け、1回限り軽減税率を適用すると同時に、死亡時までの納税延期を認める。現在住んでいなくても、過去に長く居住していた事実があれば居住用不動産と認めてよい(ただし、相続税における小規模宅地の減額割合は引き下げ、公平性を確保する必要がある。)
    第二に、居住したまま住宅資産を活用するための方策、たとえば住宅担保年金やセ−ル・リ−スバック(住宅を投資家に売却して終身のリ−スを受け、その住宅への賃貸権を得るしくみ)などの制度を整備することが重要である。
    第三に、今後の公的住宅の供給は高齢者を優先し、設計もバリアフリ−住宅にすることが必要である。これまで行なわれてきた低所得層への住宅供給は、基本的には家賃補助等の現金給付へ移行することが望ましい。住宅の現物給付は、既得権を生み出したり、低所得層のあいだでの不公平を発生させたりするからである。高齢者に公的住宅を賃貸する場合にも、家賃は市場価格と同じであってよい。経済的弱者である高齢者に対してのみ、家賃補助を行うかたちが望ましい。
  • 戦後、わが国の住宅政策は、(1)融資を通しての持家促進策、(2)公営住宅、(3)住宅公団による賃貸住宅、の3本立てで行われてきた。いま、いずれもが見直しを迫られている。住宅が量的に不足していた時代の政策をここで大幅に見直し、高齢化社会にふさわしいものへと再編することが必要である。

 

 

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