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機関紙「住団連」
  • 『健康住宅とは何?』
  • 鹿児島大学教授  藤田 晋輔
  • これまでの40年を振り返ると、森林・林業・木材の分野で育ち、折り返しが近くなった15年くらい前から研究対象が木材利用の総括である「住宅環境」へと建築の分野に踏み込んでしまった。後悔はしていないが、自然と木材を相手にする林学・林産学科で育ち、建築学科育ちでないだけに色々なことを考える。
  • この間、日本の伝統的な木造住宅である在来工法の加工作業はプレカットなどの導入により、軸組壁工法、プレハブ、2×4工法などの「工業化住宅」に限りなく近づいてきた。アメリカでは日本の在来工法に類似する伝統的な工法を復刻する運動が盛んであるそうであるが、わが国では逆の方向に進んでいるのではないか。経験豊富な大工、大工就業者数も随分減少している。大工就業者の減少だけなら良いが 、技術損失、人間のの身体的軟弱化が大きな課題である。近年の石油化学をはじめとする多くの分野の近代科学・工業の急激な発展が、住宅だけでなく、O−157を退治する善玉菌まで殺してしまうなど我々の身体まで蝕んでしまった。
  • 最近「健康住宅」をキャッチフレーズとした建築雑誌の広告、折り込みが氾濫している。住宅部材である「天然素材である有用木材」に人間に害を及ぼす毒はない。なぜ、「健康住宅」と言わなければならないのか、何を意味するのかと考え込む。
  • 今から10年位前にアメリカから「シックビル症候群」という疾患が伝わった。これは空調効果を高めるための省エネビルの増加に原因があったようで、建築資材として利用されている建材から発生した有害物質、粉塵などが室内に送り込まれたことが大きな原因であると報じられた。当時、わが国ではこの問題についてほとんど無関心であったが、高度成長期に展開された、省エネルギーを目的とする高気密、高断熱化の推進により、「シックハウス症候群」なるキーワードが溢れるようになった。
  • これは新築や改築されたばかりの住宅室内に入ると、目、のどが痛くなったり、時に頭痛がしたり、あげくの果てに喘息発作が起こる。中にはアトピー性皮膚炎を悪化させるなどの多くの症状が訴えられている。このことから時に「新築病」と呼ばれたりする。一時期、アトピー性皮膚炎の原因は「食物」を犯人とした(これは鳴りを潜めた)。シックハウス症候群の発生は室内に使用する建材、塗料、畳、カーペット、そして床下に散布する防腐、防虫、防蟻剤などから揮発する化学物質に原因すると説明されている。これは高気密、高断熱住宅に遠因はないのか。
  • 高気密、高断熱住宅のような人工的環境指向も良いが、いかなる世の中でも、家づくりは「夏をもってむねとすべし・・・」を思い出し、再度「地域密着自然共生・健康創造型の家づくり思想」にたち帰る必要があるのでは?。そして何が犯人なのか。いかにして除去するか?。薬害公害の二の舞にならぬように、商売を抜きにし、疑わしきものは排除しなければいけないと考え続けている。

 

 

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