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機関紙「住団連」
  • 『ライフサイクルと住意識』
  • 日本大学生産工学部教授  和田一郎
  • この頃そういう歳になったせいか、やたらと小学校時代の同窓会が増え出した。
  • 皆、昔の仲間意識から遠慮の無いこと夥しい。大抵話題は歳の話から始まる。自分のことは棚に上げて『お前老けたな』とくる。次は大抵家の話になる。
  • 先ずは、子供達の家離れが始まって、折角建てた家がガラガラに空いたと言う話だ。
  • リーダー格(元ガキ大将)が『俺んち、建て替えたら一番下の息子、今度転勤でやがんの、お陰でかみさんと俺だけで、家中ガラガラになりやがんの』というと皆嘲笑で迎える 『今頃、家なんか、建てやがるからだよ』というわけだ。それともう一つは老後の問題だ。中には、すでに自分の家を早々に二世代住居に建て替えて、嫁や息子とトラブルになっているケースも現れた。
  • 今度はガキ大将の嘲笑を買う『お前大体昔から甘過ぎるんだよ』というわけだ。
  • こうした、たわいもないやり取りを聞いていると昔大学時代の講義で聞いた教授の言葉を思い出す。当時はライフサイクル論全盛期だった。
  • 『都市住居で、ライフサイクルに合わせた住形態で、最も適しているのは賃貸の共同住宅だ。自分のライフサイクルに合わせて自由に住み替えが出来る。
  • 独身前期では単身者用の小さな合理的な住居に住み、結婚したらもっと規模の大きい家に住み、更に家族が増えたらもっと大きい家に越して、家族分離したら土地に近い場所に越し、独身後期になったら一階の土地の密着している場所に越す。都市のモビリィティを考えたら共同住宅がもっとも適した住様式である。こうした都市形態が将来の都市になるだろう』学生の目からすると何とも人生見通した様な味気ない話で、多少うんざりしたものの、良く考えればその通りだ。
  • しかし、家族構成が増えたからといって、社会環境が整ってくるわけでもなく、大きな家に住める給料が貰える様になったわけでもないし、そうニーズに応じて住み替えが可能な状況でも無い。そうした社会状況下でこうした意識状況を生まないのも仕方がない。
  • それどころか、社会環境は、モビリティさせるはずの、共同住宅が資産として固定される状態だったから本能的に消費者・クライアントが一戸建てを指向したのだろう。
  • ここに至って「家がガラガラになる」といった社会環境下で都市住居の理想の一端がやっと、達成されてきたことになる。
  • でももう一つの問題、つまり『老後問題』は未解決だ。消費者ニーズに新しい問題が提起された。複雑怪奇な老後の問題は今までの住論理に組み込まれていないし、社会情勢もまだそこまでいっていない。
  • 従って住まいの未来像にこうした問題は組み込まれず、欲求も意識の下に違いない。
  • ところで、住み替えをガキ大将に話したら『俺、嫌だよ!そんな狭苦しい家でかみさんと毎日顔突き合わせるなんて御免だね。冗談じゃない!』と言下に否定された。いや、消費者意識は厄介だ。

 

 

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