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機関紙「住団連」
  • 『若年者のための技能者育成システムの構築』
  • 京都府立大学教授  梶田 煕
  • 数年前、大阪郊外のある中小住宅生産業を営む会社の総務部長さんから、突然研究室を訪問したいとの電話があった。その会社の業務は、新築住宅の元請け、リフォーム工事などであり、またそのためのプレカットもできる小さな木工場を有し、20名程度の大工、5名の設計・管理等を加えて従業員50名程度の規模の会社であった。また、下請け業者を積極的に活用しながら、施主の要望に柔軟に対応可能な木造軸組工法を採用し、年間20〜40戸程度を受注しているとのことであった。若社長さんは非常に勉強熱心な方で、今後さらに生産体制を強化するとともに合理化手法、新技術を導入するとともに、現場生産性、施工精度の向上及び品質管理体制の充実を図る必要があり、そのためには技能者の技術力の向上をぜひ進める必要があるので、従業員に対して午後5時以降に月1回の割合で2時間程度の木材、木質材料に関する講義をお願いしたいとのことであった。強い要請であり、また断る理由もないので引き受けることにした。
  • 講義を始めてみると、パートタイマーの方も含め参加者全員が非常に熱心に勉強されるのには驚いた。学生相手に講義しているよりもずっと手応えがあり、当方としても力が入る講義ができたと思う。講義は、木材科学の基礎から始まって新しい木質材料、すなわち、エンジニアードウッドなどについて説明するとともに、桶や樽の違いや日本酒のスギ樽と洋酒のナラ樽などについて行ったが、毎回Q&Aの時間もあり充実したものであった。
  • (ウイスキーのスペルにはwhiskeyとwhiskyがあるのをご存じですか?前者は米国とアイルランドでのスペルで、後者はスコッチウイスキーと各国で作られるスコッチタイプのウイスキーに使われるようです。最近ではバーボンウイスキーにもeのないものがあるようです。酔っぱらって分からなくなる前に一度調べてみてはいかが?)
  • さて、このような中小規模の住宅産業、特に地域住宅産業を支えてきたのは、木造軸組工法に習熟した技能者であったが、近年この種の職業への就業者が減少するとともに、技能者の高齢化が進んでおり、経営者も苦慮しているのが現状である。これは何も住宅業界だけではなく森林経営に関する分野でも同じで深刻化しており、早急に対策を講じる必要がある。従来の技能者は最終的には自立して棟梁になったり工務店の経営者といった目標があったが、長期的に見た場合新築住宅着工戸数は減少の傾向にあるので、若年者を雇用したとしても従来のようなわけにはいかないであろう。早急にどのような対策をすれば若年者にとって将来性も考慮した魅力ある職場にすることができるのかを考え、行動する時期にきているのではないだろうか。技能者として育成するには長年月を要し、一中小規模の住宅生産会社だけでは難しくなっており、講義をしながら、将来性のある若年者を教育する新しい技能者育成システムの構築が必要だなと痛感した。

 

 

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