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機関紙「住団連」
  • 『サスティナブル・コミュニティに向けて』
  • 芝浦工業大学教授  三井所清典(住団連「まちなみ研究会」座長)
  • 近年私の所属する大学では、入学者の一部を推薦入学で採る仕組みになっており、推薦で入学が決まった高校生に2冊の書物を推選し、それを読んで報告書(レポート)を提出してもらうことになっている。1冊は大学が選び全員に共通に読ませる書物であるが、もう1冊は各学科の進学予定者に各学科で推選できる。
  • 今年は建築学科で私が担当であったので「サスティナブル・コミュニティ」(川村健一+小門裕幸共著、学芸出版社)を学科の推選図書とした。建築計画から都市計画あるいはアーバンデザインに関わる内容で、それらの分野にわたる専門用語も多い書物であるが、アメリカの先進的な町づくりの思想や事例を解りやすく紹介し、阪神・淡路大震災を体験した日本が、新しいコミュニティ形成や地球環境の保全の気運の高まる中で、省エネルギー・省資源の町づくりやライフスタイルをどうつくっていくべきかを示唆する良書であるので、少しむづかしいかと心配しながら思いきって採用した。
  • 多くの高校生が受験勉強に打込んでいる時期であり、期間も比較的ゆったりと長かったためか、殆んどの高校生がその大略を理解したことが、報告書(レポート)から読みとれた。その報告書の中からいくつか頼もしいフレーズを紹介すると、
  • 「工業化の進展でコミュニティ意識が喪失し・・・」、
    「個々の人間の孤立化で個人的な快適性や利便性を目的とした環境が発達しすぎた・・・」、
    「住宅と職場が分断され、住宅に残った女性や高齢者が意志があっても社会に出ることが困難・・・」、
    「コミュニティ意識が回復すれば犯罪の発生が抑制される・・・」、
    「ヒートアイランド現象を抑制するために緑陰トンネルをつくりたい・・・」、
    「地面の透水性を高め地下に雨水を溜めて利用したり、洪水を防止したい・・・」、
    「自転車や歩行者を増加させ省エネに努め、大気汚染に歯止めを掛けたい・・・」、
    「環境との共生が実現された町では自然にコミュニティ意識が回復する・・・」、
    「環境との共生を少しずつ実現し地球危機を心配しないで暮らすためのまちづくりをしたい・・・」などである。
  • 一冊の本を読んだ報告であるが、アメリカのすばらしく健康な考えとそれを実行しているまちづくりに感動し、自らも将来そのような仕事にかかわる夢を抱いたり、目標を握んだりしたようだった。昨今、なにかと10代の青少年の問題が多く、対処に当惑気味な状況を合わせ思うと、この本を読んだ高校生のように早期に社会に貢献するロマンを持てる機会がつくれないものかと思う。
  • 現実のわが国の住宅地に目を向ければ、郊外の住宅地に戸建のマイホームを獲得した人が高齢化し、自動車も運転できなくなって買物も困難になった人が多いと聞く。集合住宅団地も住宅だけであれば同じ問題が起こる。住宅地はさまざまな年齢、職業、所得あるいは世帯構成の人びとが住み、近くに就業の機会が得られることが望ましい。30〜40年経過した住宅地の再生はどうしたらよいか。これは新しい住宅地をつくる以上に重要な課題で、わが国にふさわしい思想と手法の開発を急がねばならない。そして21世紀には今の若者達の合力を得て、サスティナブル・コミュニティを実現していくことになろう。

 

 

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