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機関紙「住団連」
  • 『促進税制は見直しの時期』
  • 関西大学教授  矢野 秀利
  • 税制が、個人や企業などの経済主体に影響をあたえるためには、税制の存在や、税制の変更をその経済主体が行動時に意識していること、そして行動を変える余地があることが必要条件になる。
  • たとえば、源泉徴収で所得税が徴収されていて、各人がどれだけ税負担をしているかを意識しない場合には、所得税は労働時間に影響をあたえない。また労働時間が固定的であれば、各人が税負担を知ったところで労働時間をどうすることもできない。年末調整表の所得税総額を見て税負担の大きさにため息をつくばかりで、働いているときは税金のことは忘れている。多額の所得税を払うプロスポーツの選手はもっと深刻であろう。そして、税制には不快感を持つ。
  • 消費税が消費の落ち込みに追い打ちをかけたのは、消費税が人々の消費行動に完全にリンクして税負担を求めるからである。消費者は常に消費税を意識して行動しているということである。とりわけ「外税方式」を採用しているために明確に税負担を感じるようになっている。つまり完全にリンクした税制であれば人々の行動は税制によって変わるということである。
  • さて、住宅促進税制として住宅取得減税があることは周知のとおりである。住宅をローンで買った場合にローン残高を基準に6年間で合計180万円の税額控除が適用される。たしかに金額としてはわかりやすい税制である。しかし、この税制によって住宅取得を促進させる効果が大いにあるのだろうか。
  • 住宅を取得したその年に税金が30万円戻ってくることは「おもわぬ天からのめぐみ」でありがたいことだが、この税制の最大の問題点は、促進税制が住宅購入時に購入者に意識されないということである。「住宅を買ったら後でオマケがもらえてた」ほどの効果しかもたないということである。減税額が大きい割りには住宅購入の意思決定時には効果が薄いということである。住宅ローンを組むときに、銀行は「ローンを組んだら年末に30万円税額控除されます」というよりも「ローンの利子支払分は所得控除されていきます」という方が多分、ローンを勧めやすいであろうし、ローンを組む方も利子分は所得控除になっていくかと思えば、「なるほど」と少しは気が楽になるであろう。ましてや利子分の所得控除が20年間ほども適用されることになれば、人々のローン支払いの圧迫感もかなり和らぐものと思われる。
  • ついでに述べると、現行の促進税制による減税分は住宅購入には効いてこない。結果としての減税分は消費と貯蓄に回る。住宅促進税制は住宅取得を推進するというよりも一般的に消費を刺激する効果はある。その意味では景気対策にはなるが・・・
  • 最後にローン利子所得控除の理論的裏付けとしては、企業の借入金の利子支払いが損金扱いになるのと同様に、家計においても支払い利子は家計の「生計費」、「費用」扱いをすることによって正当化することはできるということを付け加えておきたい。

 

 

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