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機関紙「住団連」
  • 『明日の住宅・土地税制のために発想の転換を』
  • 東京都立大学経済学部教授  福島 隆司
  • 住宅・土地税制には多くの不合理な制度が存在している。それらを改善することはこれからの住宅市場の健全な発展のために是非とも必要である。
  • 不合理と思える税の一つに、建物への固定資産税がある。建物の固定資産税は、公共サービスの対価であると説明されることが多い。しかし、この説明は、現状の建物固定資産税においては、納得できる説明ではない。公共サービスの対価であるならば、消防や警察などのサービス需要を減らすであろう耐火建築や防犯設備などを備えた建物は、固定資産税が安くなるべきである。しかし、現状は、それらのコストを余分にかけた建物の固定資産税はかえって高くつく。同様に、その根拠を財産課税に求めたとしても合理的説明はできない。
  • こうしてみると、建物への固定資産税は現在の税体系の中では的確に位置付けることは出来ない。そこで、建物への課税を正当化するとするならば、発想の転換が必要になる。すなわち、住宅などの建物は利用者がそれに見合う家賃を払うことにより収益(所得)を生み出す財であると位置付けることである。貸家にとっては当然であるが、持家の場合所有者が自身に家賃を払っているという帰属家賃の考えを適用すれば、貸家と持家の区別はいらなくなる。建物は長い間そのサービスを生み出す投資財なのである。
  • この考え方を適用するならば、建物への課税は資産から生ずる所得課税となる。すると、現在の建物への固定資産税は廃止し、家賃、帰属家賃課税へと移行することが、建物課税への合理的な選択となる。帰属家賃課税をするためには、正確な帰属家賃を算定しなくてはならないが、当面は現在の建物固定資産税をほぼそのまま使う簡易方式の帰属家賃課税で間に合うであろう。貸家ではすでに家賃収入は所得課税されているので、固定資産税廃止により大幅な減税になるが、これはもともとの建物固定資産税の根拠が曖昧であったことを正した帰結であり驚くには当たらない。
  • 最近話題となっている、住宅ローン利子払いの所得控除も、この考えに従えば、投資費用の控除となり、貸家にも持家にも等しく適用されてしかるべきである。そうなれば、貸家と持家間にある税制上の歪みの一つが消滅する。この場合、ローン利子控除は(帰属)家賃所得課税と同時に導入される必要があることに注意すべきである。現状のままに、ローン利子控除を導入するならば、持家ばかりが有利になり、かえって貸家との間の歪みを増幅してしまう。ローン利子控除は、旧来の建物固定資産税の位置づけからは、決して正当化できるものではないのである。
  • また、建物は投資であるので、消費税は建物建設時にかけるべきではない。現状では消費税とは言いつつも、現実には消費でない投資にも消費課税され、貸家の場合は、費用として控除されているようであるが、本来の消費課税という観点に立つならば、当然課税されるべきではない。持家についても、同様である。
  • このように、建物課税を考えることにより、建物への投資が活性化され、貸家と持家の間に存在する税制上の非対称性がなくなり、資源配分上も望ましい効果が期待される。

 

 

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