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機関紙「住団連」
  • 『住宅市場の主役を問う』
  • 法政大学経済学部教授  黒川 和美
  • 近ごろは部屋の窓の開かないホテルが増えてきたようだ。その理由は、室内の環境が十分快適にコントロールされているということだろう。空調も照明も完備されているから、窓を開ける必要などないというわけだ。暑さ寒さ、明るさ眩しさの変化の激しい外界を遮断して常に一定の快適さを維持し、いちいち窓を開閉する煩わしさから利用者を解放してくれるのは高度なサービスといえないこともない。確かにこのようなサービスにほっとすることもあるが、季節のいいときなどは窓が開かないことを恨めしく思うこともある。勝手といえば勝手なものだが、このようないろいろな感じ方は、第1に外の環境の状態に左右され、第2に人間側の状態に影響されるといえそうだ。
  • 景気対策の主役は常に住宅需要の創出が担ってきた。住宅が建てられると、家具の購入等大型の波及効果を伴う。ところがバブル崩壊後、この従来の公式が当てはまらなくなってきた。地価の下落が続き、デフレ調整型経済が浸透し、不良債権のボリュームが膨らみ、必死の政府施策も空振りが続く。民間の需要盛り上げ策も実らない。従来型住宅需要の創出は困難を極めてきた。予想を遙かに超えて地価は下がった。住宅に資金を回せるはずだ。都心に住める。車への出費は減り、地下鉄も利用できる。さらに余裕が生まれる。
  • 小渕政権になって、財政構造対策は中止。徹底的な低金利策を導入し、徹底した財政出動を行い、徹底した住宅減税策が導入されて、ついに昨年の暮れからマンションの販売がにわかに忙しくなってきた。中小のマンション業者の多くは既に市場から撤退して、大手の業者もこの成り行きにとりあえず乗り遅れない事で、今のところ市場の先を見通す余裕など無くなっている。先ず、当面条件の良い売れ筋の立地で良い物件を短期に供給し続けて行かなくては、この不況を乗り切れない。
  • 中心市街地の空洞化対策が叫ばれているが、この対策のとりあえずの一手が都市型のコンパクトな住居の供給である。自動車社会の進行とともに郊外に移っていった住民の抜けた穴を埋めるのは、都市型のライフスタイルを追求する若い世代だろう。超低金利で、都心で好立地で、手の届く価格なら、親の資産を期待して頭金を調達し、買える。第2団塊の世代が自立して都心居住を目指すのに今のところ妨げとなるものはない。将来の金利負担を心配するより、低い金利で借り始めるのは取り敢えず得だからだ。
  • 長期的に見ると人口は二千七年にピークを迎え、世帯数のピークも二千十二ないし三年にやって来る。その時点の住宅建設戸数は年当たり九〇万戸水準になると言うのが一般的な予測である。既に遊休住宅は増加の一途を辿り、住宅の需給のミスマッチも拡大の一途を辿っている。UJIターンといわれる地方回帰も増加しており、住宅産業を取り巻く環境は厳しさをますます強めている。
  • 最近話題となっている、住宅ローン利子払いの所得控除も、この考えに従えば、投資費用の控除となり、貸家にも持家にも等しく適用されてしかるべきである。そうなれば、貸家と持家間にある税制上の歪みの一つが消滅する。この場合、ローン利子控除は(帰属)家賃所得課税と同時に導入される必要があることに注意すべきである。現状のままに、ローン利子控除を導入するならば、持家ばかりが有利になり、かえって貸家との間の歪みを増幅してしまう。ローン利子控除は、旧来の建物固定資産税の位置づけからは、決して正当化できるものではないのである。
  • こんな時期だからこそ、住宅産業の対応はオーソドックスでなければならない。競争市場での勝敗は供給物件の立地と性能・質にかかっている。消費者は賢くなっているのだ。
  • 1. 広くて、環境が良くて、教育条件がよい上に、手の届く価格を提示できる。
    2. 便利な立地、新しいライフスタイルを提案できる、職住混在型の住居
    3. 高く貸せる、すぐ売れる、好立地
  • 地価の下落に続いて、ディベロッパーとしての企業能力が試されている。

 

 

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