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機関紙「住団連」
  • 『さまざまな住宅政策と住宅金融政策の将来』
  • 慶應義塾大学経済学部教授  吉野 直行
  • 衣・食・住は、われわれの毎日の生活に欠かせないものである。国土の可住地面積が小さいわが国では、大都市の住宅価格が高く、住宅の質が低く、狭い住宅に住まわざるを得なくなっている。このため、住宅水準の向上を目指して、政策誘導がなされている。
  • 諸外国の例を参考にすると、さまざまな住宅政策が存在する。(1)政府による住宅の直接提供(公営住宅の建設などによる住民への住宅補助)、(2)減税による住宅購入者への優遇(ただし、資金は個人が別途調達する必要あり)、(3)個人に対して民間金融機関が提供する住宅ローンへの利子軽減などによる補助、(4)わが国の住宅金融公庫のような公的金融機関による長期低利融資、(5)民間の住宅ローン債権の流動化、(6)民間の住宅ローンに対する公的機関の債務保証(モラルハザードを防ぐ方策を考える必要あり)などである。これらの6つの住宅政策のなかで、わが国では、郵便貯金・簡易保険・年金資金を原資とする、住宅金融公庫による融資がその中心であった。
  • しかし、住宅金融公庫による長期・低利の融資も、一定の仮定のもとでは、減税による住宅取得促進や民間銀行への住宅融資利子補給と同じ結果をもたらすことを理論的に示すことができるし、2001年からは、郵便貯金や年金資金の財投預託が廃止され、自主運用に移されることが決定されている。これに伴い、住宅金融公庫にはこれまでのような潤沢資金が入ってくるという状況はなくなる。住宅金融公庫が直接的な融資を従来通り行うためには、次のような3つの方法のいずれかによって資金を集めなければならない。第一は、大蔵省が財投債(第2国債)を発行することによって資金を集める方法、第2は、住宅金融公庫が政府保証債を発行することによって独自に資金を集める方法、第3は、政府保証のつかない財投機関債を住宅金融公庫が発行する方法である。いずれの方法をとるにせよ、マーケットからの資金調達となり、民間金融機関の資金調達との競合が懸念される。
  • アメリカの住宅金融では、政府関係機関が民間銀行の融資した住宅貸付債権に債務保証を付けたり、民間金融機関のローン債権の買い取りをして流通市場で販売するという方法をとっている。アメリカで住宅貸付債権の債務保証や流動化が進んでいる理由には、(a)住宅ローンの場合、アメリカでは、企業貸付と違って、貸し倒れリスクが小さいこと、(b)終身雇用制のない米国では、人々が職業を変えるので、その居住場所も変更して一生に何回か住宅購入を行うことが多いため、住宅貸付債権の種類が豊富であり、流通市場で販売し易いという点、(c)アメリカの銀行には貸付のリスク比率を減らしたいという姿勢があり、BIS基準ではリスク比率を高く評価されてしまう住宅ローン債権を政府機関に販売することによって、貸付債権のリスクを減少させるという効果、(d)長期の住宅ローンであれば、金融機関の資金が住宅購入者への貸付として固定化されてしまうために、他の運用に回すことができなくなってしまうため、流動化を好むなどのためである。
  • これに対して、わが国の住宅貸付の場合には、民間銀行は優良で貸し倒れリスクの少ない住宅ローンに関しては、その貸付債権を手放したくないという気持ちがこれまで強かった。今後とも、優良な個人顧客との取引を目指す金融機関にとっては、貸し倒れリスクの少ない住宅ローン顧客と長期の融資関係を結ぼうとするインセンティブが働くものと思われる。しかし、貸し出しのリスク比率を低く押さえたいという民間銀行の姿勢は強まると予想され、民間の住宅貸付債権の流動化への期待は高まると予想される。以上のように、民間金融のビッグバンに合わせて、住宅金融公庫をとりまく財投制度の改革もすすむことが予定されており、今後の住宅金融政策の望ましい方向に関する活発な議論の展開が望まれる。

 

 

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