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機関紙「住団連」
  • 『老朽化マンションの建替え』
  • 日本大学教授・日本学術会議会員(幹事)  田中 啓一
  • 都心居住が大都市住民を中心にして強いニーズがあり、地価の下落を始めとして、低金利、住宅減税などによって実現されつつある。都心居住の中核にマンション(集合住宅)があることは言うまでもない。いまやマンションは全国レベルでは350万戸に近づきつつある。1000万人前後の人々が、この都市型住宅に住んでいることになる。
  • 日本の人口の一割を占め、都市の集積のメリットもデメリットも独占している感のある東京であるが、分譲マンションのストックは93年(平成5年)には約42.5万戸であったのが、ここ数年間、高水準の供給が行われたことにより、97年末には50万戸のオーダーとなっている。その後も増え続けており、21世紀初頭には60万戸台に達することが予測されている。このことが都心人口の増大の一因となっていることは事実であろう。
  • しかも限られた貴重な都心の土地は、その有効利用がますます求められている。このことは、環境・エネルギー問題の視点からも容易に予測される。この傾向は、大都市のみならず中核都市にあっても、大なり小なり見られる現象といえよう。
  • このように、わが国の住宅にあって、そのウエイトを急激に高めつつある分譲マンションであるが、多くの課題を抱えていることも事実である。その一つに老朽化の問題があることは言うまでもない。
  • 分譲マンションの建築時期についてみると、81年(昭和56年)の建築基準法の耐震規定の改正前に建築されたものが、東京都の場合には約半数に及んでいる。港区、中央区、江東区などをはじめとした区部中心部においては、その割合が高く、老朽化・陳腐化が進んでいることも顕著である。
  • 東京における分譲マンションの築後年数別のストックについて、概ね10年後の2010年(平成22年)時点の試算がある。(東京都住宅政策審議会)。ちなみに、この前後は、日本の高齢化が最も進む時期でもあるが、築後50年以上のものが約2100戸(約40棟)、築後40年以上のものが約39,200戸(約800棟)、築後30年以上のものが約202,500戸(約4000棟)となり、今後築後年数の経過に伴う老朽化が分譲マンション全体に急速に広がっていくものと分析されている。
  • 老朽化マンションが増大していくことは、都市のスラム化に拍車をかけることになる。これを防止するためには、リフォームと建替えしかない。リフォームも経過年数には対応できない。このため、物理的にも経済的にもいつ建替えすべきかは、避けることのできない課題でもある。このことは、個人の住宅資産とともに都市の社会的資産のあり方についても直結することになる。
  • ところが、これまでの分譲マンションの建替え事例としては、阪神・淡路大震災に係るものを除くと、全国でもわずか40件にすぎない。しかもその分譲主体としては、公的団体によるものが8割を占めている。しかも留意すべきは、これらの建替えの多くが、従前容積に余裕があり、自己負担をほとんど伴わない等価交換方式によっている。
  • それにしても、築30年分譲マンションの建替え決議を「有効」とした、この3月の大阪地裁の判決は、現実的なものであり、一定のあるべき方向を示したものとして評価できよう。

 

 

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