住宅すまいWEB
ホーム / 過去ログ一覧 / 機関紙「住団連」 / 機関誌巻頭言 / 『不完全な住宅市場』
機関紙「住団連」
  • 『不完全な住宅市場』
  • 明海大学教授  松本 光平
  • 現在、未曾有の不況の中にあって、明るい将来イメージをなかなか描くことができない。不況の脱出と望ましい将来の構築の為に、市場主義的な様々な改革が行われているが、必ずしもはかばかしい効果が上がっていない。
    一方で急速な高齢化や地球環境問題等、解決困難な制約条件が将来を暗くしているからであろう。
    いずれにしろ、これらの改革と制約条件がわれわれの将来を決定する。
    住宅の分野の大きな改革は、建築基準法の性能規定化と「住宅品質確保促進法案」による長期保証と性能表示であろう。後者については、この原稿の執筆時では未だ国会で審議中であるが、少なくとも長期保証は、先進諸国の例に見るように、時代の趨勢である。
  • これらの変化が何をもたらすのであろうか、住宅産業界は、受け身としてではなくむしろ積極的に対応して新しい居住空間を開発し、市場の選択に委ねるべきであろう。
    「省エネ」「高耐久」「高耐震」「サスティナブル」「シックハウス」「楽介護」「バリアフリー」「スマートハウス」「居住ロボット」等は、21世紀の社会に適合する住宅の開発に関する重要な技術的課題であるといえよう。
    これらの課題に対応して、建築材料、構法、住居関連設備機器の開発、新しい居住空間(住宅)の提案や建設、さらには住居を一つのサブシステムとして取り込んだ広がりのより大きなシステムの構築等が検討されている。
  • 建築基準法の性能規定化はこのような新しい技術開発を促進する目的があり、「住宅品質確保促進法」による性能表示制度は、住宅の適性に関する客観的な情報を提供することにより、住宅市場に競争原理が正しく働く基盤を形成するものである。
    その意味で、市場主義的潮流に沿った改革と考えることができる。
  • 市場による評価には2つの異なる見方がある。
  • 1. 消費者は企業のPR活動に強く影響される。
    2. 影響は受けるが消費者を騙しつづけることはできない。
  • 前者は市場主義を否定する見方であり、後者は肯定する見方であるが、どちらも相当の真実性がある。
  • 特に、新しい技術やこれにより実現される新しい居住空間は、専門家から見て「良い」ものであっても市場で評価されないことがしばしば起こる。
    新しい居住空間の開発事例がしばしばメディアで取り上げられるが、わが国の住宅市場の特殊性から、特定の居住者のみに対応するようなものが多い。
    この場合、特定の者にとって良い居住空間は、他のものにとっても良い保証はない。特に中古市場で評価されるとは限らないのである。
  • 住宅の個別性、特殊性は市場性を損なう危険がある。この点、欧米の住宅の場合、箱としての住宅は、設計が標準化されているものが大部分である。
  • また自由市場では少数回なら消費者をだますことができる。悪徳不動産屋や建設業者の手口が有効性をもつのはこのためである。このような者も住宅市場の競争相手なのである。
  • 特にわが国の住宅市場の評価は、立地条件と敷地面積と価格以外の要素については鈍感である。
     21世紀でもこのような市場の不完全性は変わらない可能性がある。
  • これを改革して住宅分野において市場が正しく機能するようにすることが新しい法制度のねらいである。また、産業界自体の倫理性もこの改革に不可欠な要素なのである。

 

 

前のページへ戻る

このページの先頭へ