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機関紙「住団連」
  • 『大工になりたい』
  • 芝浦工業大学工学部教授
    職業能力開発短期大学校「東京建築カレッジ」学校長  藤澤 好一
  • 1年前の朝ドラ「天うらら」が再び話題になっている。「大工さん」が男の子の憧れの職業ナンバーワンになったからだ。大工をめざした「うらら」に影響をうけたのではないかという声を私のまわりでなんどか耳にしている。
  • この「大人になったらなりたいもの」調査はある生命保険会社が10年前から実施しているもので、この会社のホームページで詳しい内容が紹介されている。それによれば、男の子のトップの座はこれまで野球選手(5回)とサッカー選手(4回)が占めてきた。大工も人気は高い方だがこれまでは4位が最高で、ベストテンに顔を出さなかったことも2回ある。それが前年の10位から一挙にトップに躍り出たわけだ。
  • 全国の幼児童、小学生を対象にした調査だが、大工になりたい男の子の年齢層は小学1〜2年生が突出していて、次いで5〜6年生となっている。となると「天うらら」の影響というのはかなり怪しくなる。学校に通う彼らが朝ドラをじっくり見ているとはとても思えないからだ。
  • 「天うらら」のドラマ制作にあたって大工の世界を細々とアドバイスしたのは私たち「東京建築カレッジ」のスタッフだった。「東京建築カレッジ」は大工の養成機関では必ずしもないのだが、木造住宅を完成させるのに必要な大工技能をカリキュラムの大きな柱としており、その指導にあたるベテランの現職を多数スタッフに擁している点が買われたのである。
  • その時感じたことは「大工像」が人によって実に様々だということ。住まいをつくるマスタービルダー的な存在から棟梁、名人、偏屈、あるいは下請けの工程従事者まで、シナリオライターもそのイメージをつくりあげるのに苦労が多かったようだ。
  • 子供たちの目が現実的になったという見方もある。長引く景気低迷のせいか「手に職」意識が高まったというのだ。たしかに大手企業だからといって安定が保証される時代ではなくなった。だからといって大工の道が収入や処遇に恵まれているわけでもないし、あの3Kイメージが払拭されたわけでもない。収入とか、見かけではない惹きつける何かがありそうだ。
  • 「東京建築カレッジ」へ入ってくる若者のほぼ半数が大工志願者だ。女性も混じっており、「うらら」現象は4年前の開校以来の傾向でもある。それぞれの「大工像」はさまざまだが、志願動機は住まいづくりの仕事というより、人や生活に関わることに関心があるようだ。手に職、という意識には、自らの能力による達成感、「やりがい」のようなものがあるようだ。
  • 子供のなりたい意識にもそれがあるのかもしれない。女の子のトップは食べ物屋さん、次いで看護婦さん。看護婦はこの10年間つねに上位を占めてきたが、食べ物屋はこの5年間で上位を占め、この2ヶ年は連続してトップだ。
  • 男女合わせると「医・食・住」、いずれも健康とか安らぎ、豊かさを与える生活に密着した仕事だ。彼らが大人になる21世紀は確実にこのような仕事が重視されるようになるのだろう。
  • その仕事がどんなに素晴らしくて、大切か、大人達にはそのための条件を整える責任があるようだ。

 

 

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