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機関紙「住団連」
  • 『21世紀は住文化の時代』
  • 早稲田大学教授  尾島 俊雄
  • 19世紀までの日本人のライフステージは明解で、生活様式もまた、士農工商などと定まった慣習の中で、諦めと心の安らぎから楽しむゆとりもあったのだろうか。江戸時代の養生訓などが、昨今、心の病気を癒す最善の方法として見直されている。
  • 20世紀の日本は、1000年単位の東洋文化の潮と、西洋近代文化に開化した100年単位の高波に直撃され、生活様式や社会制度等、全ての面で革命的に変化し、その余波が今も続いている。しかし、バブルやビッグバンなどを経て、私達の日常生活は益々激変しそうな反面、21世紀には急速に安定した地方文化の時代になりそうな気配がする。
  • 特に住文化においての20世紀末は、世界中の材料や構造、さらにはデザインを画一量産化したが、その限界が見え始めている。サスティナブルグロース社会の実現には、それぞれの地域に見合った文化や生活に基づく価値観や生活様式を確立すると共に、建築様式もまた、人々の本当の好みや要求に合わせることこそがゴミを出さないで地球環境を護る最良の方法だということがわかりかけたからである。
  • 筆者は、巨大都市のインフラストラクチャーを研究していて、都市に住む人々のライフスタイルや建築様式を確立しない限り、都市基盤施設の設計はできないことを知った。そこで、乱暴を承知で、21世紀都市を4タイプに分類した。政令都市はあくまでもハイパービルを中心に巨大都市をクラスター化し、大深度地下を張りめぐらせ、安全性の確保を第一とする。人口60万〜20万人の中核都市は、都心居住型のペントハウス型都市デザインに。15万〜3万人の小都市は、今日の小選挙区中心都市として、その代議士や首長の人格がその町の歴史と共に歩む。その多くは戸建て住宅や町屋を中心とした商店街が町の骨格をなす城下町の風景を取り戻す。3万人以下の集落は散居村型の住宅で、これは限りなく自然環境と共生し、情報インフラストラクチャーに依存する。
  • 以上、日本の21世紀住文化を想定した上で、日本学術振興会の未来開拓研究として、1996年度から2002年までに2種の住居を試作している。一つは、大工や庭師を育成する富山国際職藝学園で、木造を主とした完全リユーズ型の住居である。一つは、北九州研究学園都市で、鉄とガラスを主とした完全リサイクル型の住宅である。この両者は筆者の研究室のホームページで報告している。このような住居様式が社会に定着するためには、前者にはリユースセンターなる古材や中古住宅の流通制度や組織が必要であり、後者には、車や家電のリサイクルプラントの100倍のスケールとなるであろう住宅のリサイクルプラントを建設することが望まれる。
  • 欧米先進諸都市の居住環境は、世界の都市問題競争の時代にあって、その檜舞台となっている。20世紀の日本は産業育成に全力投球し、第二次産業社会の覇者となったが、世界は既に第三次産業の都市間競争の時代に突入し、その面での遅れは20年、今日の生活空間倍増論も政治的掛け声だけに終わらせず、実のある住文化の育成の一環としたい。

 

 

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