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機関紙「住団連」
  • 『住宅とカビ』
  • お茶の水女子大学生活科学部教授  田中 辰明
  • 最近では省エネルギーの必要性から高気密、高断熱の建築が増え、年間を通じて人間に住み良い住環境を提供している。 これがカビ・ダニにとっても住み良い環境となりこれらがアレルゲンとなっている。カビには実に多くの種類があり乾燥した状態を好むカビや湿潤な状態を好むカビもある。 しかしカビの生育には水分が必要であり、 一般には湿った環境を好む。 どうしても建築に結露が生じるとカビが生育しやすくなる。高断熱、高気密の住宅になり、 管理された換気が行われないと結露が生じやすく、 結露が生じるとカビが生え、 カビが生えるとこれを餌としてダニがやって来るという循環を起こすことになる。
    カビは細菌とは異なり、 主として多細胞の生物で、その形態もかなり複雑である。酵母やキノコと共に植物分類学上では真菌類に属する。微生物の中でも高等な部類に属する。 味噌、鰹節、醤油、日本酒、納豆等の酵母食品やペニシリンなどの抗生物質、多くの化学工業製品や医薬品がカビによって生産されている。カビは菌糸と呼ばれる2−5μmの球形で、肉眼では見えない。空中に飛散し、適当な環境に置かれると発芽して菌糸となり、さらに分岐して菌糸体となる。菌糸は栄養の摂取と発育に関係し、子実体は胞子を形成し生殖を営む。カビの繁殖はこのように主に胞子によって行われる。
    住宅内でのカビの発生は多くは浴室、食堂、厨房、押入れ、北側の部屋、換気の悪い部屋であるが、カビが全く発生しない部屋は無いといって良いぐらいである。木材、繊維、皮革、ゴム、その他に被害を認める。これら材料に基質を造りカビは繁殖する。一度基質が出来るとカビの退治はやっかいである。肉眼でカビが認められる時には基質にカビがしっかり定着し材料は相当のダメージを被っている。カビは建築材料を劣化、腐朽、腐敗させ、人体にとってはカビを大量に吸い込むとアレルギー症状を起こしたり、人体に入り込むと場合によっては感染症を引き起こすなどの害を生じる。
    人間とカビの付き合いは古い。旧約聖書新共同訳「レビ記」13章は「皮膚病」が記されている。ここでは「衣服にかびが生じた場合、羊毛や、亜麻の衣服でも、あるいは革やどのような革製品でも、青かびか赤かびが、衣服か、革か、織り糸か、どのような皮製品かに生じたならば、それはかびの繁殖によるものであるから、祭司に見せなければならない。祭司はそれを調べてから、一週間隔離する。7日目に再び調べた結果、かびがその衣服や織り糸や、あるいは革や革が用いられているすべての製品に広がっているならば、それは悪性のかびであって汚がれている。 かびが生えているものは、それが衣服であれ、羊毛や亜麻の織り糸であれ、革製品であれ、焼き捨てる。それは悪性のかびの繁殖だから火で焼く。・・・・」と記され、さらにこの章の後半では「家屋に生じるかび」という文章もある。カビが太古から人類に害をもたらせるものとして恐れられていたことが分かる。

 

 

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