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機関紙「住団連」
  • 『住宅と周辺環境を考える』
  • 東洋大学工学部環境建設学科講師  小瀬 博之
  • 6年ほど前、改築のために自宅の設計をおこなうという貴重な機会を得た。当時、大学院修士課程に在籍していた私は、学部から大学院で学んだことと設計製図の経験をもとに設計に挑んだ。施主は自分の親だから常に要望を聞くことができるし、自分も長年その土地に住んでいたためにその土地の置かれている状況をよく知っていたので、いろいろな制約に悩みながら設計案をまとめた。
  • これと並行して、父は業者探しを始めていた。住宅展示場を回ったり知り合いの家を訪問したりした後に、ある業者と具体的な交渉に入った。このとき、私は設計案を見せながらこんな家を建てたいという要望を伝えて基本設計をお願いした。
  • 出てきた設計図は、南面を広く取るために自動車は切り返しで入れてというものであった。しかし、南面は隣接する住宅が敷地いっぱいに建てられており、かつ実際には南西面であった。南東から北西に風が抜けることを長年そこに住んできた経験から知っていた私は南東面を居室にすることを強く主張したが、これをなかなか聞き入れてくれなかった。
  • 最終的には父が造りのよい家を近所で見つけて、その建物を施工した業者にお願いすることにした。結局、平面図を見ても理解できない両親に模型を作って空間や隣地の様子を理解してもらいながら、私が基本設計を仕上げた。
  • この業者は周辺環境に対する情報が不足していて、かつ施主の要望を受け入れるだけのシステムができていなかったのではないか。南面を広く取ることは当然のことと考えたのであろうが、敷地は45度南面から振れていて、かつ隣接する住宅がぎりぎりに建てられていることを設計者は図面上で果たして意識していただろうか。
  • 先日、ある方の設計した環境に配慮した住宅を案内してもらったが、南面の敷地ぎりぎりに隣接する住宅が建てられていて北西面に道路が接しているということで、広く開口が取れる北西面に開口と庭を持ってきていた。窓から見える庭は道路に接しているために広々として見えた。また、ある人は自宅の近くの農家が土地を売りそこに分譲住宅が建つが、せっかく育っている立派な木を切ってしまってもったいないという話をされていた。現在の私が住んでいるマンションの前には大きなケヤキの木があり、葉の色づきの変化や鳥のさえずりで季節の変化を感じ取っている。このような経験から、住宅を作っていくうえでいちばん基本的、かつ重要なことは、庭園造りの考えかたにある「借景」のようなものを強く意識していくことなのではないかと考えるようになった。
  • 私は、住宅まわりの水辺空間について研究をおこなっており、その関連で建築環境・省エネルギー機構が認定しているものをはじめとする環境共生住宅について調査をおこなっている。これを見ると、要素技術についてはいろいろな工夫がみられるものの、上で触れたような周辺環境にどう対応していくかという基本的なことについて触れられているものは少ない。敷地の状況によって対応が異なるから認定制度になじまないかもしれないが、そんな基本的なことを少しでも多くの人が考えることができたら、まちが少しずつよい環境になっていくのではないか。

 

 

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