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機関紙「住団連」
  • 『損害問題を考える』
  • 東京大学工学部建築学科教授  菅原 進一
  • 「住宅に関する話題なら何でも」との本稿の依頼を気にかけながら、A航空の深夜便で出張した。この便は、翌早朝にシャルル・ド・ゴール空港に着き、約3時間半の待ち合わせでジュネーブに午前9時頃に到着する。ところが、成田でスルーで依頼したスーツケース(ST)が荷物受け場に出て来ない。明日の会議書類が入っていて弱った。6人程の旅客が同じ目に遭い、居合わせた係員の指示でラゲッジ追跡デスク(BというAの子社)に行った。よくあるらしく、2人の係員が手慣れた様子で対応していた。手続きを済ませ日用品セットを貰らい宿に向かった。
  • 翌朝ホテル・レセプションから届いたとの通知があった。部屋まで届けないのを訝しく思いつつ降りて行き、鍵がこじ開けられA社マークの入った紐で括られた我がSTと対面した。ホテルの係員は、届けられたままで置いてありA社下請けのC運送会社が配達したと説明した。部屋に運んで調べると書類は無事で、朝食もそこそこに会議に出かけた。B社の営業時間は22:00までと聞き、会議後の夕刻STを持ち込んだ。対応した社員は当初責任回避の素振りだったが、この一連の事態では、まず御社が小生に弁済してから、元締めのA社やC社と輸送過程での犯人探しや被害額の負担割合などを相談すべきだと、汗だくで主張した。何とか通じたらしく、係員は席を立ち乗しと30分間くらい話し込み弁済OKと云った。そしてSTの購入額を聞いて来た。5年以上も前で記憶も薄れ、気忙しい旅行中でもあり時間的被害も含めX万円くらいと答えた。係員はまた上司と20分間くらい相談し中古状態だからもっと安いはずだと云った。当方は新品で弁済すべきだと粘った。結局、X万円でOKとなったのは19時過ぎだった。
  • 翌日、昼休み時間を使いSTを携え紹介された鞄屋に行った。同じ物はなく、X万円に近いものを選んだら、鞄屋はお前のはX/2万くらいだ、これを選ぶなら差額のX/2万円を払えと来た。しかし、B社とX万で手を打ったのだからこれにすると当方は主張した。鞄屋はB社に半時くらい長電話し、自分の商品を見る目が疑われることをB社に訴え3X/4万円で妥協したと話した。被害者なしで決めるのは不当と反論したが時間もなく約3X/4万円のものを選択して、この件は落着した。B社と交渉中、書類を作成するからそれを日本で弊社支店に持参すれば弁済可能と云われたが、現に困っているからと断った。成田に戻りA社の出先に聞くと、修理代の支払い限度は2万円、より低額の社も多い、件の書類持参でもX万円の支払いは無理とのこと。壊れSTでやっと帰国したあげく、そんな事では頭に来ると云ったら、弊社の規則であり不納得の向きは顧客サービス部へ相談をと言い捨てられた。
  • この件は住宅の損害処理の内実にも関連すると思う。重要なのは、損害の内容と補償金額を広く明示し、顧客の個別事情にも柔軟に対応できる処理体制を整備すべきことである。だが、現実はキレイごとでは済まない。顧客側も被害補填はバトルと心得て、情報収集に努め自己防衛を図る義務があると痛感した。阪神震災で、時を追って全壊査定棟数が増えたのも住み手心理が働いたからであろう。

 

 

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