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機関紙「住団連」
  • 『住宅の長寿命化に向けて』
  • 工学院大学建築学科教授工学博士  吉田 卓郎
  • 地球環境保全に対する社会の関心が高まる中で、建築分野が地球温暖化ガスの排出や廃棄物について大きいシェアを占めていることを踏まえて、その対策が求められている。日本建築学全など建築関係5団体は2000年に地球環境・建築憲章を公表し、そこで示された5項目のひとつが、長寿化である。長寿命化の意義は、基本的に次の二つである。ひとつは、建築を造るのに、多量の資源やエネルギーを用い、CO2を排出しており、長寿命化を図ることによって、年当りの負荷を小さくできることである。エネルギー使用やCO2排出の多くは、原料から建築用資材を製造する過程のものであり、建築工事については、その量は比較的小さい。もう一つは、寿命が尽きた建築は、解体され大量の廃棄物となるが、これを抑制することである。
  • 住宅の長寿命化は、住宅関係者にとって当面の重要な課題のひとつであることはいうまでもないが、単に技術的な問題の改善だけでは片づかない、幅広い内容の課題である。
    住宅の寿命が長くなる中で、その間、それが良好な住まいであり続けることが肝要であるが、新築時点の機能や性能を保持し続けることだけでなく、住まいとして供用されている間の、様々な状況の変化への対応が必要である。
  • 新築時点の機能や性能を保持し続けることができるには、耐久性に優れた資材や機器を用いるとともに、適切なメンテナンスが欠かせない。しかしながら、住宅に供用される資材や機器は、おのおの寿命が長いものもあれば短いものもある。内装や設備機器の多くは本来寿命が短く、これに耐久性に優れた材料を用いメンテナンスを適切に施すのも限界がある。やはり適宜更新を行いながらでないと、住まいとしての良好な状態を保持していくことはできないが、そのためには、更新に伴う余分な工事、いわゆる道連れ工事を最小限にする構法計画や、更新時の不便を計画的に最小限にするライフサイクル計画が重要である。
    住宅の寿命が長くなれば、それだけ状況の変化への対応が求められる機会が増大する。居住している家族の成長変化や居住者の変化への対応は、その代表的な課題のひとつであり、現在では平面計画や構法計画に関わる手法が、実用的なレベルで整備され成果を上げているといって良い。法規や関係基準の変化への対応が求められる状況は、頻繁ではないが生じれば影響が大きい。近年では、建築基準法の改正や品確法の制定、住宅の省エネルギー基準の改正により、既存住宅についてもその改修が関心を集めている。以前であれば、勢い建替えに走りそうになる問題であるが、地球環境問題は、こうした風潮に変化をもたらしており、また、建設リサイクル法などにより、解体廃棄に要する費用が顕在化する中で、経済的にも、建替えに対するリフォームのメリットが大きくなりつつある。
  • 住宅が適切なメンテナンスやリフォームが施されることによって、住まいとしての良好な状態を保持し続ける上で、居住者所有者の役割が大きいことは、改めて言うまでもない。それは、新築が多くを専門業者にゆだねているのと対照的である。子とはいえ、専門的な能力が必要な分野も少なくないはずであり、新築が今後減少していくことが予測されている中で、これまで新築に目を向けてきた住宅関係の各業種は、その優れたノウハウをメンテナンスやリフォームにも向けることが期待されるし、既にその動きは顕著であるといえよう。その中で、克服されるべき大きい問題として只今立ちはだかっているのが、既存住宅の資産価値評価の現状である。適切なメンテナンスやリフォームが施され、良好な状態を保持している住宅であっても、資産価値評価にはそれが反映されない現状は、住宅の長寿命化にとって重大な問題といわざるを得ない。このことが、メンテナンスやリフォームに対する居住者や所有者の動機付けのブレーキになるとすれば、これも問題である。不動産評価における更地主義は、地価の高騰に伴って次第に支配的になったものと考えられ、さほどの歴史を持っているわけではない。さりとて、工事費に比べなお地価が高水準にある中で、その克服は決して容易でなさそうであり、住宅関係者の努力と周辺のご理解を得て何とか展望を開きたいものである。

 

 

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