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機関紙「住団連」
  • 『住宅のストック化に如何に対応すべきか』
  • 工学院大学建築学科環境コース 助教授工学博士  遠藤 和義
  • 現在、日本には約5,000万戸の住宅が建っており(ストック)、毎年120万戸程度の住宅が新設(フロー)されている。ストックをフローで割って求められる住宅の平均寿命は約42年(=5,000/120)、つまり約42年で全ての住宅が建て替わることになる。遡って1980年代にこの計算をあてはめると、ストック約3,800万戸、フロー約135万戸、寿命約28年となる。単純に比較すると、住宅の寿命はこの20年で1.5倍に延びたことになる。業界の方々は、より詳細な顧客データなどによって、この傾向を捕捉しているはずである。
  • これにともない、住宅に関連する投資の内容も当然変化する。新築に関わる投資は縮小し、長寿命化にともなう維持管理投資の比重が高まる。さらに、マクロな視点に立てば、年間のフローの増減ではなく、社会資産であるストックの価値の評価へと関心がシフトする。これは日本経済全体の一つの傾向で、経済学などではこれをストック化と呼んでいるようである。ここでは、この住宅のストック化に対して、如何に対応すべきかについて考えを述べたい。
  • 言うまでもなく、住宅はす人生最大の買い物である。土地を除いても年収の2倍程度以上の投資が必要で、多くの場合、長期の住宅ローンを組んでこれに充てる。しかしながら、そうした個人、社会にとって多大な投資が、築後10数年も経過すると動産市場で価値評価ゼロとなる実態がある。もちろん、まだ十分住むことが可能で、賃貸市場に流せば客がつき、収益還元的な評価が可能としても、である。実際、欧米各国と比較して、日本の国富(国全体のストック)に対して住宅の占める比率は相当に低く、行政サイドや業界もその運用について軽視してきたきらいがある。
  • 住宅のストック化を前提とした、つまり、スクラップアンドビルドに依存しないで、経済全体の枠組みの中でストックとしての住宅の価値を議論し、またその質、住環境、都市・地域環境を具体的に改善するためにも、その評価をインセンティブとして、ユーザーは資産としての住宅を管理する意識を持ち、行政にはサポートを、企業にはそれに関わるハードとソフトの提供が求められる。
  • さらに、ストック化時代の資産価値の管理という観点からすると、従来のライフサイクルコスト(LLC)をべースとした費用系列のみの評価では不十分である。これまでのように、どのような維持管理投資をしても結果10数年後に評価ゼロとなるのであれば、LCC低減がユーザーの取りうる唯一の資産管理政策となっていた。しかし、これからは、維持管理投資の経済的な効果やそれによるユーザーの居住性向上等を問題にすべきで、いわばライフサイクルのバリューやベネフィットの最大化も選択され得る。業界としても、単なるLCC低減の追求では先行きは明るくない。今後、業界にはユーザーの資産としての住宅に対する総合的なマネジメントが確実に求められる。そこで効率的なサービスを提供できなければ、ユーザーは別の資産に投資先を求めることになる。言うまでもなく、これもストック化時代の必然である。

 

 

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