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機関紙「住団連」
  • 『男女雇用機会均等時代の住宅』
  • 東京都立大学大学院教授  深尾 精一
  • 団塊の世代に属する我々の、大学の建築学科を卒業して30年目のクラス会が先日あった。同級生約60名の内、女性は2名であり、大学で建築史を教えているW女史が、クラス会に花を添える存在である。70年代の後半に教え始めた都立大学の建築学科でも、女子学生はクラスに2人程度であった。それが、70年代の終わりにセンター試験が導入されると、一挙に6名になり、その数は最近までほぼ単調増加であって、90年代半ばには、ほぼ半数にまで近づいている。そして、その女子学生のかなりの部分が、男性に引けを取らない収入を得る職場に就職している。
  • 都立大学の建築学科が社会を代表するわけではないが、女性の社会進出は確実に進んでおり、それが「ファミリー」のあり方に変化をもたらしていることは、言うまでもない。結婚年齢は確実に上昇している。家族形態が変化しており、求められる住宅が多様化していることは、日本に限らず様々な場で指摘されている。高齢者のための住宅や若い単身者のための、比較的小規模で質の良い住宅の供給が求められているとも言われている。
  • そのような背景のもとで、家族形態の変化に対応した住宅のあり方を探る研究や、多様な居住者の要求に応える住宅モデルの提案が盛んになされている。建築学科の卒業設計でも、新しい家族形態に対応する住宅、今までにない居住形態を可能にする集合住宅の提案が、定番の一つになっているようである。住宅メーカーやマンションを供給する不動産業界なども、新たな家族形態に対応した住宅を考えているのであろう。
  • しかし、そのような多様な住宅のあり方は、建築家や研究者が提案したり、供給者が考えたりするものというよりは、本来、生活者自らが考えるべきものである。供給者側は、その要求に対応するような生産の仕組みを作っておけばよい。問題は、いかにそのような仕組みを構築するかということである。そして、その際に考えるべきことは、男性と対等に収入を得るようになった女性の、住宅取得における立場である。
  • 戦後の日本の住宅は、核家族の世帯主である男性が手当てをするという前提で、持家政策を背景としてその建設の仕組みが構築されてきている。もちろん、団塊の世代にも共稼ぎの夫婦はいる。ただ、その場合でも、住宅取得のあり方に関しては、妻が専業主婦の家庭を標準として考えていたのではないだろうか。しかし、別の見方が必要な時期が来たと言ってよいであろう。バブルの時代の住宅について言えば、増えてきたダブルインカムの家族が、それまでの仕組みのままで住宅を取得しようとした結果、住宅の購入価格を引き上げたのだと言ったら、言い過ぎであろうか?
  • 女性も同等の収入を得ることが標準となる社会では、家づくりのあり方がどうあったら良いのか、考えるべき課題は少なくない。共稼ぎを前提にローンを組んで住宅を取得した場合、その所有形態はどのようにあるべきなのか。区分所有法の元での共同名義でよいのか。そもそも現状の住宅ローンの仕組みなどが、対応するのだろうか…
  • 住宅を手に入れるときの発言権は、昔から主婦にあったと言えなくもないが、自らの収入で家を手当てする女性の発言権とは基本的に異なるであろう。その観点から住宅のあり方を考えれば、それは個室や居間のあり方などとは次元の異なる問題となる。家庭を構成するにせよ独身であるにせよ、もしくは他の形態の共同生活であるにせよ、長期に渡って満足されるような住まいを建設する新しい仕組みが必要であろう。
  • 若い女性が、ブランド物の入れ物にお金を費やすのではなく、住まいという入れ物をどのような形式で確保するかを考えるようになるのが、これからの望ましい社会のあり方のはずである。団塊の世代の人間には想像しにくい社会であるが、そうなれば、住宅産業の明日はそれほど暗いものではない。団塊の世代に比べて、自らの手で住まいを確保しようとする人間は、それほど減らないことになる。そして、今までに建設された住宅がその新たなニーズに適合しないのは明らかであるから、リフォーム市場を含めれば、市場規模はむしろ大きくなるとさえ考えることができるのではないだろうか。

 

 

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