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機関紙「住団連」
  • 『危険で零細な住宅の建て替えを』
  • 上智大学経済学部教授  山崎 福寿
  • これまで、日本の住宅の質は劣っていると言われ続けてきた。しかし、日本の持ち家面積の平均はおよそ123m2で、アメリカには劣るもののドイツやフランス、イギリスに比べて遜色はなく、もはや見劣りのする水準ではない。これに対して、平均的な借家面積は44m2で、ドイツやフランス、イギリスといったヨーロッパの諸国に比べて、著しく低い水準にある。
  • また、耐震性能や老朽化の程度を見ると、日本の住宅の品質は諸外国に比較して劣っているかもしれない。 1981年の新耐震基準が施行された以前に造られた住宅の割合は約50%である。このような住宅は地震にきわめて弱い。神戸で起こった地震と同じような地震が起これば、甚大な被害が生じると予想される。
  • さて、外国に比較して劣っている借家の規模を大きくするにはどうしたらよいのだろうか。規模の小さな借家しか市場で供給されてこなかったのは、借地借家法によるところが大きい。借家法の正当事由制度のために、規模の大きな住宅を貸すと、家賃を改定できず、退去の際も高額の立退き料を請求されることが多かったからである。これに対して、小さな借家ならば、借主が自発的に転居することも多く、立ち退きに摩擦を生じることが少なかった。これが借家の規模を小さくした原因である。
    その証拠に、最近導入された定期借家権のもとでは、規模の大きな借家が郊外で次第に供給されてきている。まだ住宅の数は少ないが、新規オフィスの多くは定期借家権が主流になりつつある。この制度のもとでは、家主は、契約期間の終了に伴って契約更新か解除かを選択できる。これが規模の拡大につながっている。したがって、定期借家権を既存の契約にも適用できるようにすることによって、借家規模の拡大を図ることができる。これは零細な借家の建て替えを強力にサポートすることになる。
  • つぎに、危険な住宅を建て替え、そして街を構造的に安全なものに作り変えるには、どのような手段が必要であろうか。これまで、品質が劣っている住宅が温存されているのは、中古住宅市場が整備されていないからである。中古住宅での売買量は諸外国に比べて著しく低い。人々は住宅を購入すると、その住宅にほとんど手を入れず、補修もしない。その結果、住宅の寿命はおよそ26年という短さである。
    中古住宅の市場が発達していないために、質を向上させるというインセンティブが働かない。中古住宅の価格は著しく低くなっている。この原因は、住宅の性能あるいは品質についての情報が得られないからである。このようなことから、中古住宅市場を整備する必要性が高まっている。
    中古住宅市場が整備されれば、中古住宅は高く売ることができるようになる。住宅を高く売るためには、住宅の維持補修に常に気を配り、住宅を大切に使うというインセンティブが働く。その結果、住宅の品質を高めることができる。また住宅の売買を容易にすることによって、街を活性化することもできる。土地や住宅の取引を阻害している取引税を廃止すべきである。さらに、建物に対する固定資産税も廃止すべきである。土地に対する固定資産税は合理的な根拠があるが、建物に対する固定資産税は合理的ではない。丈夫でしっかりとした住宅を建てると、高い税金がかかるのは望ましくない。これによって、土地や住宅は売りやすくなり、堅固な家に建て替えやすくなる。さらに、これは地震に強い街に作り変えることができる。

 

 

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